2023年11月06日

死とは、何なのか

#仏教 #死 #阿頼耶識

死ぬということは、仏教ではどういう意味なのでしょうか?

1つの考え方です。

仏教では心こそが人の本体と見なしますが、心は多層構造であると考えます。自分自身である「私」という認識は、心の一部である「意識」が身体を通して認識しています。「意識」は知性です。身体の脳が大きな役割を果たしています。他者への認識も同じです。他者と交信する際にも身体を通じて直接行われ、「意識」が誰々と認識をします。

そして「意識」より深い層には、普段の自分では知り得ることのできない部分があります。深い瞑想によって知り得ることが可能とされ、これを「阿頼耶識(あらやしき)」などと言い表します。簡単に言えば、過去いく世にも重ねてきた自分の行為やその影響が貯蔵されており、言うなればデータ貯蔵庫です。前世のみならず、無限の過去世からのデータです。

この「阿頼耶識」は、この世において「意識」や身体と同じように刻一刻と変化していますが、身体の「死」によって「意識」も継続不能になる一方、「阿頼耶識」は継続します。そういう意味ではこの「阿頼耶識」が人の本体であるように思えてきますが、実際にはただの入れものにしか過ぎません。本体というと不変な存在をイメージしがちですが、仏教ではそういう本体はないとされます。

なので敢えて言えば、ここに貯蔵されている自分の行為やその影響、これを「業(ごう)」と言いまして、この「業」こそが本体ということにもなるかもしれませんが、これはやはり現代的なデータのような存在なので本体と言えるかどうかは微妙です。しかしいずれにしても、「業」によって自分自身は次から次へと転生しますので、私たちは不滅であるとも言えるわけです。

じゃあ死ぬってのは、いったい何なんだと言いますと、すでに述べてしまいましたが、この世で身体が継続不能になることです。脳も含めて身体が継続不能になれば、この世での「意識(つまり「今の私」)」も消滅します。しかし、「阿頼耶識」は継続します。自分の「業」は大量に残っているので、それに基づいた来世がスタートします。転生です。新たに身体を得て、新しい「意識」も出てきます。記憶は継続しませんが、「業」はしっかり貯蔵されています。こういう意味で不滅なのです。

上記を言い換えますと、普段の「意識」レベルで自分や相手を認識出来なくなった状態が「死」です。「阿頼耶識」は普通は知り得ませんので、私たちは相手の手がかりをなくしてしまうことになります。交信不能に陥るというわけです。私は両親を亡くしましたので、両親とは生前のような交信は不可能になっています。しかし、両親はとくにどこにも行っていません。私の「阿頼耶識」と両親の「阿頼耶識」は、今でも関係性を持っているはずです。「意識」レベルでは分からないだけです。

ただ、仏教(大乗仏教)では成仏することが目的なので、成仏すると「阿頼耶識」は仏の智慧に取って代わります。業も消滅し、自他平等のさとりの境地に至ります。これが果たしてどういう状態なのか、色々と経論には説かれています。「業」によって輪廻転生を繰り替える私たちを、その「業」の鎖から解き放ってくれるはたらきとなるのでしょう。両親が成仏していれば、両親の「阿頼耶識」は仏の智慧になっており、智慧は私を救ってくださるはたらきです。やはり、私と両親は関係性を持っています。

死ぬということは交信不能なだけであり、仏教的にはとくに別離ではないと言えそうですね。私たちがいかに身体に頼って生きているのかが良く分かります。

とは言え、大事な方が亡くなることは耐え難い辛苦です。交信できないのであれば、事実上の別離ではあります。これを仏教では「愛別離苦」と言い表しますが、交信不能であっても語り掛けること、古来、人は語り掛けることによって「愛別離苦」を受け止めて来ました。写真に語っても、手紙に語っても、本堂やお墓で語っても、何でも良いのだと思います。「死」を経てなお語ること、無意味だとは思えません。


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posted by 伊東昌彦 at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 仏教 教え〜事事無礙 -jijimuge
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