2020年02月07日

小中一貫校と中高一貫校

小中一貫校(小学校と中学)、皆様も最近聞かれたことあるかもしれません。国や都道府県は既存の公立小学校と公立中学校を再編し、あらたに9年間の公立小中一貫校の設置を推進しています。少子化が進むなか、どの地域でも学校統廃合は課題となっています。統廃合によって小中一貫校を新設することも多いようです。当然ながらメリットもあるでしょうし、デメリットもあろうかと思います。公立小学校と公立中学校を一貫化することは、いずれも管轄が市区町村であることから難易度は比較的低いでしょう。都道府県が推進してはいても、1つの市区町村の教育委員会と行政と議会で決めることができるからです。

一方、公立の中高一貫校(中学と高校)という存在を、皆様はご存知でしょうか。これは主として既存の都道府県立高校をもとに、簡単に言えば都道府県立中学校をそれに加えて成り立っています。中高一貫(←ここでは高校入学が可能な学校も含めます)と言えば、私のような年代ですと私立と国立しかなかったように思います。私立は独自教育を掲げての中高一貫であり、国立は国立大学の付属ということで実験校としての存在です。私立はたとえば慶應義塾であれば小学校と大学も含めて16年一貫という場合もあり、国の方針に基づいていないということは明白です。福沢先生です。国立中高一貫校は東京だと東大教育学部付属、学芸大附属、筑波大付属があります。いずれも教育学と関わりのある学校です。実験的に共学であったり別学であったり、色々な形態が用意されているようです。東大合格者の多い筑波大付属駒場は男子校ですね。

都道府県の設置する公立中高一貫校は、こうした私立や国立の中高一貫校と形態は同じもので、選抜制なので入学するには試験に合格しないとなりません。巷の小学生向け進学塾では「公立一貫校コース」を設けているところも増えてきました。私立や国立の中高一貫校を目指す小学生と同じように、それなりに早い時期から受験勉強を始めないと合格することは難しいのが現状です。ちなみに都市部を中心に中学受験が過熱している背景には、こうした公立中高一貫校の増加があります。都道府県のなかには、小中一貫校化を推進しながら、同時にこうした中高一貫校を設置しているところが増えてきているのです。

しかし、この2つの形態はいずれも一貫校でありながらも、内実としては相当に存在意義が異なります。小中一貫校は地域にある一般的な学校で、中高一貫校は大学進学を前提とした進学校です。中高一貫校は大学受験に有利だと言われます。小中一貫校化のメリットを喧伝しておいて、同時に選抜制の中高一貫校も自前で設置している。たしかに私立のようには費用のかからない公立において、色々な形態の学校を用意することは意義あることと思います。勉強をしたい子にとっては、選抜制であっても進学校である中高一貫校は魅力的です。それで費用が比較的かからないとなれば、これは本当に有難いことです。それは理解できることなのですが、独自教育の私立や、実験校としての国立ではない、日本では広く等しく教育の機会を与える役割のある公立が、同じ一貫校でありながらも、あからさまに形態の異なる2つの存在、つまり地域の一般校である小中一貫校、そして進学校としてエリート教育をする中高一貫校という2つの形態から成り立っている、もしくはそれに向かっているという現状に、余計なお世話ながら不安を覚えます。

もちろん、現状においても都道府県立の公立高校には入学試験があり、大学進学実績の優れた高校もあります。しかし、現状では公立中学校から、高校進学を目指す皆が同じようにそれぞれの学校の入学試験に臨みます。これは機会において平等です。中高一貫校も公立小学校から出願可能ですので、一見すると同じように機会において平等かのように見えるのですが、現実は違います。中高一貫校は今、非常に人気の高い学校です。人気があれば試験倍率は上がります。県立高校は中学校での成績によって志望校を決めますので、倍率が実質5倍なんてことはないでしょう。しかし中高一貫校は実質5〜6倍なんてこともあるのです。私立や国立であっても、なかなか実質5倍にいきません。2〜3倍程度です。これはものすごい倍率なのです。合格するためには、少なくとも私立や国立を目指す子たちと同じ程度の勉強を、進学塾で早期から始めないと難しい。進学塾は費用がかかります。高校受験でも塾代はかかりますが、中学受験のほうが費用はかさみます。費用を出せる家庭は出せばいいのですが、仮に小中一貫校と中高一貫校が併存している場合、こうした受験対策が可能な家庭の子だけ、小中一貫校を途中で離脱するかたちで中高一貫校を目指すことになります。そして、大学進学実績の優れた公立中高一貫校に優秀な生徒を集まれば、その都道府県において、既存のトップ公立高校の学力レベルは相対的に下がることでしょう。トップ公立が入れ替わることすらあるかもしれません。そうなりますと、公立中高一貫校に合格するための進学塾費用を捻出できない家庭の子は、いくら成績が優れていてもその地域のトップ公立には入学できないという事態になります。

こうした状況が全国的に広がり盛んになったらどうでしょう。校数の少ない私立や国立ではなく、全国各地にほぼまんべんなく広がる公立において、一般校とエリート校の二極化が出現するのです。子は日本の将来です。全国各地で二極化教育が実施されれば、それがそのまま日本の社会を基礎づけることになります。つまり、日本の社会も明確に二極化されるということになるかもしれません。全国的に広がらなければ、それほど問題にはならないことでしょう。都道府県が勉強の出来る優秀な子により高いレベルの機会を与えることは社会的にも良いことですし、私も反対はしていません。ただ、全国的に広がったら…。日本全国、小中一貫校を途中で離脱していく子たちが増え、その子たちは残った子たちとは別の道を歩むことになる、なんてまるで別の国のような状況が身近になってしまうかも。小中一貫9年+高校3年、一方では小中一貫校途中離脱6年間+中高一貫6年という、同じ公立校でありながら、こうしたまったく異なる教育課程が併存することになります。ちなみに多くの生徒が高校進学する時代、9年+3年はアンバランスに思えてなりません。既存の6年+3年+3年で十分で、もし中学1年生になるとき、急激な学習段階のアップなどで問題となるならば、小学校と中学校の連携をもっと深めれば問題解消につながるのではないでしょうか。

なお、この記事においては、中高一貫校であっても高校からの入学も可能な学校も一貫校として含めましたが、昨今、公立中高一貫校であっても、高校からの募集を停止するところが出てきています。私立にそういう動きが顕著ですが、公立も私立の後追いを始めたわけです。なぜ日本の公立でこうしたエリート校を作ろうとするのか、私にはまったく理解できません。たしか日本ではエリート校を公立では作ってはいけない、という決め事のあることをどこかで見たような気もしますが、何かの見間違いだったのかもしれません。いずれにしましても、公立はこんなダブルスタンダードのような真似事はせず、もっと勉強意欲のある子に返済不要な奨学金を用意すべきだと私は思うのです。公立中高一貫校に合格するため、多くの家庭が進学塾に費用をかけるような状況を作り出すよりも、よほど健全です。ちなみに公立中高一貫校がたくさんできれば、私立一貫校も経営が圧迫されることになるでしょう。民業圧迫という点でも問題です。奨学金を与え、その意義を理解させた上で使命感をもって学ばせたほうが、より日本のためにはなるように思います。

posted by 伊東昌彦 at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 仏教 住職恣意 -jyushokushii
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/187131644
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック