2019年01月02日

本年もよろしくお願いいたします

皆様、本年もよろしくお願いいたします。かつて私が坊さんなりたて20代の時分、浄土真宗では「良いお年を〜」とは言わんのだ(→年に良いも悪いもないから)、とある先生が仰っていたのを拝聴しました。ついでに「あけましておめでとう」とも言わん(→新年になってもめでたいことはないから)、とのことでした。若い私はなるほど、素晴らしいこれこそ仏教なのだと合点したものです。たしかに良し悪しというのは自分自身に帰属するものなので、良い年や良い日があるわけではないというのは実に仏教的です。

そのせいもあるのか、今でも年内はどうも挨拶に困ってしまうときがあります。年末はたいてい皆さん「良いお年をお迎えください〜」ってなるので、そうなると20代の刷り込みが効きまして、思わず「あっ、有難うございます」と適当な返答になってしまうのです。間違ってない返答ですが気が利かないですよね。浄土真宗ってのは傍から見ると髪の毛フサなので軟弱な印象を受ける方もいるかもしれないのですが、意外と教えには頑固なところありまして、妥協は許さぬという、何とも厳しい掟のようなものがあるのかないのか。

クリスマス頃にディズニーランドに行きましたら、出会うキャスト出会うキャスト(→ディズニーランドではスタッフをキャストと呼ぶのだと女房から伝授)、皆さん「ハッピーホリデー」と声を掛けてくれました。昔は違ったかと思います。数年前からなのかもしれませんが、今回はとくに印象深かった。これは長年アメリカにおられた先生から教えてもらいましたが、「メリークリスマス」だとキリスト教徒だけなので、他宗教の人々に配慮してクリスマス休暇でも使用されるようになった挨拶だそうです。ディズニーはアメリカン。

挨拶でも色々と宗教事情が関係してくるもので、やっぱり宗教は生活に深く関わっているものなんだなあと思います。そもそも「挨拶」だって仏教、とりわけ禅で使われていた言葉ですし、こういうのもっと発信していかないとわけわからなくなってしまう。「挨拶」は相手の心を見極めるという意味だったかと思うので、実は返答こそが大変重要なわけです。なので年末での上記のような私の返答では、何だか適当な返答だなあと思われることとなってしまい、修行が足りんということになるでしょう。

一般的には「良いお年を〜」と同じ言葉を返すのが穏当なわけですが、仏教的には「良し悪しなし!」とかいきなり返答すれば良いのでしょうか。多分、相手の方は焦りますよね、気に障ること言ったかなって。かつて臨済の山田無文老師がある講演会の質疑応答か何かで、「あの世はどんなところでしょうか?」と尋ねるおばあちゃんに、いきなり「ない!」と返答したとの逸話を聞いたことがあります。おばあちゃん焦ったろうなあと思いますが、禅としてはたしかに「ない」なんですよね。諸々の存在というのは、人が普段使っているところの「ある・なし」ではないからです。

とは言ってもねえ、もちろん老師もその後フォローされたと思いますが、返答ってのは大事だもんだなあというのが「挨拶」の本義から窺い知ることが出来ます。で、「良いお年を〜」に対する返答はと言いますと、浄土真宗としては相手の気持ちを有難くいただき、「有難うございます」と答えつつ、「南無阿弥陀仏」とお念仏を添えるのがひとまず穏当でしょうか。うまい返答が見つかりません。浄土真宗の場合、「南無阿弥陀仏」がオールマイティ性を発揮してしまうので、言葉は悪いですが面白味に欠けるかもしれませんが、教えにも適っているとは思います。

私たちは、良し悪しとは本来、自分自身に帰属するものであるにも関わらず、それを年や日のせいにしているところがあります。今年は良くない年だからとか、そんなのまともに考えればあるわけないことです。でもなあ、どうしても責任転嫁したくなりますよね。何でも自分でしょい込むのは辛い。それが現実なんだと分かったときはもっと辛い。「一切皆苦」と仏教では説きますが、ああ、ほんと苦しいこと多いなあと40代も後半になってつらつら思います。阿弥陀仏という仏様は、もとよりこんな私たちを救うためにいらっしゃるので、だからこそ阿弥陀仏におまかせしましょう、ということで「南無阿弥陀仏」なのでした。

あなたにとって「良い年」になりますように、という意味を含んだ「良いお年を〜」という挨拶ですが、実のところ嫌いではありません。仏教的にはちょっとなという側面もありまして、このように考えてみたくなったわけですが、何とも日本人的な奥ゆかしさがあり心地よい響きだと思いません?

posted by 伊東昌彦 at 09:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 仏教 教え〜事事無礙 -jijimuge
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