2018年03月18日

自戒の念を込めまして

昨今、お葬式についての考え方や、そもそものあり方について、随分と変化があると言われています。私も実際、そう感じることがあります。お葬式というものは、もともとは商業的なものではなく、地域で互助的に成り立ち、そこに宗教者である坊さんが主として関わってきました。今はその互助的であった部分が機能しなくなり、多くを葬儀社が担っています。たとえば、善福寺の周辺では「墓掘り」と呼ばれる役回りがありまして、これはかつて土葬の時代、実際に穴を掘っていた役の方々です。私の知るかぎり火葬の現代におきましても、お墓のカロートを開けて納骨をする役を担ってこられました。しかし、徐々にその役は葬儀社の社員さんに代わっていきまして、今では役名だけが残されています。

会社勤めの方が多くなり、さらに分業が進んだことによりまして、葬儀社の存在はお葬式において欠かせないものとなっています。私もお葬式においては、一緒にご供養をしているという感覚です。葬儀全般に精通されているのはもちろんのこと、ご遺族と直接接する時間も多く、何かと頼りになる存在です。ただ、お葬式の窓口が葬儀社だけになってしまい、失礼ながら会社の都合でお葬式の内容が左右されることもあり、ご供養が置いてけぼりになってしまうケースも見受けられます。葬儀社は会社法人ですので、宗教法人のように税制面で優遇されているわけではありません。利益を出して納税し、安定的に経営をしていかねばなりません。時には自己都合に走ってしまうこともあるということ、経営者として理解できないことではありません。住職も実は法人経営者だからです。

ただし、葬儀社はあくまでもお葬式をサポートしているだけなので、ご供養の主体はご遺族であり宗教者でなければ意味がありません。とりわけ宗教者である坊さんは、お葬式という宗教行為を司っているわけなので、葬儀社とともに取り組んではいても、宗教行為は自分たちが主導するという強い自負心を持っていなければ困ります。もし葬儀社に暴走気味なところがあれば、それに歯止めをかけることができるのは、お葬式が宗教行為である以上、寺院や坊さんしかいないからです。

これは学校と受験対策の進学塾の関係に似ているところがあります。学校は寺院で、塾は葬儀社だと考えることができるでしょう。入試のある学校に入学したいのであっても、必ず塾が必要というわけではありません。自分で勉強できれば、それで事足りるからです。かつてのお葬式も、地域の互助で成り立っていましたので、葬儀社は不要でした。ただ、時代とともに必要になってきた。塾も同じです。さらに学校側から見ましても、塾は今、不要だとは言い切れない存在でしょう。難しい入試問題を出す学校は、そのレベルに受験生を引き上げてくれる塾がなければ、欲しいと思う学生や生徒が集まりません。また、中高では在校生に対しても、学校の勉強だけで大学入試に対応できるかと言えば、あまり自信がないというのが本音ではないでしょうか。寺院でありましても、葬儀社がいなければ、お葬式をしっかり取り仕切れるのかどうか、はっきり言って私にはまったく自信がありません。

塾と学校は同じく教育に関係していますが、その目的は大いに異なります。葬儀社と寺院も同じくお葬式に関係していますが、当然のことながら、目的はまったく異なっています。だからこそ相互に必要な存在なのであり、学校であっても寺院であっても、ちゃんとここら辺のことを理解していないと問題です。一番問題なのは、塾と特定の学校とが業務提携をし、塾がその学校の内容よりも、提携を優先して塾生を大量に送り込むような誘導をしたり、また、葬儀社と同じく特定の寺院や坊さんとが業務提携し、葬儀社が自社の都合でお葬式を取り仕切ることがまかり通ってしまうことです。業務提携をしてはいけないということではなく、互いに自分たちの都合や利益を最優先させていることが問題なのです。学生や生徒や保護者、そして門信徒をないがしろにしている実態があることが問題で、自分たちの責務を忘れてしまっているのでしょう。

寺院、坊さんという存在は、商業的な側面もあって成り立っているものですが、本来の目的は商業ではありません。商業化している寺院や坊さんに対して、世間は冷笑しているということ、早めに気づいていかないとならないはずです。自戒の念を込めまして、お葬式には毎回気を引き締めて臨みたいと思います。
posted by 伊東昌彦 at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 仏教 住職恣意 -jyushokushii
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